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国土交通省公表の「水循環解析に関する技術資料」

 国土交通省から「水循環解析に関する技術資料」が公表された。

 大学で水文学を専門にしていたので、食いついてざっと読んでみた。

 水循環解析について、境界条件の設定から、モデルの選定、入力データの設定、解析計算、出力まで一通りの流れが示されている。水文学を数値解析する学生にとって基本的な教科書のような構成だ。地下浸透にはタンクモデル、地下水流動にはダルシー式など、私も知っている式が示されていた。でも蒸発散に使われるソーンスウェイト式、ハーモン式というのは知らなかった。

 そもそもなぜこのような資料が公表されたかというと、水循環基本法が成立し、

 地方公共団体は、水循環に関する施策に関し、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有するものと定められた

「水循環解析に関する技術資料」を公表~地方公共団体による健全な水循環への取り組みを支援~

ためだそうだ。

 理念としては分かるのだが、具体的にどのような問題があって、水循環解析を行うことにより、どのように解決するのかが見えてこない。洪水対策としての河川堤防や高潮対策としての防潮堤の整備のための解析は行われているだろうし、土壌水分量と降雨強度による土砂崩れの可能性なども調べられているだろう。地下水位の解析をして地下水揚水の制限をきめ細かくするとか、河川に有害物質が放流されたときに地下水や閉鎖性水域が汚染される過程を調べタイムラインを立てるとかだろうか。何れにしても、行政サイドの施策というより研究者のケーススタディに近い気がする。研究者の参考書としてはわかりやすい資料なのだが、行政に携わる者として見るといまいち実用性に欠ける。

 加えて、都市部においては人工による水・熱循環を無視できない。人工排熱、人工水蒸気、水道、下水道といったanthropogenicな要因を入力する必要があるだろう。手前みそだが、10年前の私の研究によると、東京都23区に供給される年間の水道水は年間降雨量より多いし、水利用に伴って付加される熱は3.8x10^16Jにも及ぶ。

waterbalance.png

↑東京都23区の水収支(中山,2006)

 発表しているのが国総研なので研究が第一なのだろうが、行政の抱える問題を解決する手段とするにはギアがかみ合っていないような不一致を感じる。

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