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植村直己の冒険と三浦雄一郎の冒険 - 本多勝一・武田文男編「植村直己の冒険」

 本多勝一・武田文男編「植村直己の冒険」に三浦雄一郎へのインタビューも載っていた。いまでは80歳でのエベレスト登頂者として有名だが、エベレストからの滑走や、滑走の世界最高速記録を樹立するなどスキーヤーとして有名な人である。インタビューの年月は書かれていないが、この本が発行された1991年、三浦雄一郎氏は59歳。年齢の限界についてどう考えていたのか気にしながら読んでいた。

 武田 (中略)年齢的に、これはいかんなというようなことはありませんか。

 三浦 20代のころはむちゃくちゃ体力だけでやっていた。40代、50代は自分が脆いことも、限界も知っていますよ。睡眠時間さえ十分に取れたら、例えば行動時間は20代のとき1日12時間ぐらい行動できたのを10時間、8時間に縮める。ということならば、その間の要素はそう違わないような気がしますね。だからぼくは直己の場合も、体力的にうんぬんというのは関係ないと思いますね。

三浦雄一郎「直己の冒険の現場に接しつづけて」,本多勝一・武田文男編「植村直己の冒険」(朝日文庫,1991)P.206

 と、年齢はあまり問題にしていないようだ。70代でキリマンジャロに登った父三浦敬三の話のあと、植村直己の年齢の話に移る。

 武田 年齢限界説を植村さんの遭難に結びつける人がいるんですけれども……。

 三浦 ぼくは意味ないと思いますね。

 武田 意味ない?

 三浦 彼にはもっともっと可能性がある。生きてれば、60だって80だって何かやる男ですよね。

三浦雄一郎「直己の冒険の現場に接しつづけて」,本多勝一・武田文男編「植村直己の冒険」(朝日文庫,1991)P.207, 208

 植村直己について年齢を問題にしていないならば、三浦雄一郎氏自身も気にしていないのだろう。とはいえ、70歳から3回もエベレストに登るというのはえらいことだと思う。

 ところで、植村直己の行ってきた冒険の中で北極点到達行は暗に批判されることがあるようだ。1つは最新の機械の潤沢な活用。数日おきの空輸による食料等の搬入、NASAの人工衛星による現在地確認、北極点からの飛行機での帰還など。もう1つは広告会社の積極的な活用。植村直己は電通に依頼し、さまざまなスポンサーをつけた。また募金や講演会も大々的に行い、冒険に必要な金を集めた。それぞれ冒険の範疇を超える、金儲け主義との批判を受けたようだ。

 その点、三浦雄一郎氏もさまざまな金のかかる冒険をしているものの、あんまり上記のような批判を受けることが少なく、対照的だと本多氏も述べている(P.145)。文章を読んでいると、真面目で素朴な植村直己と要領のよい三浦雄一郎氏という対比がみえてくる。

 武田 あれが終わったあと、朝日体育賞を受賞し、植村さんに朝日へ来ていただいたんですけれど、そのときレセプションでね、朝日新聞の幹部に向かって、「これはアマチュアの人に与える賞なのでしょう。私はいろいろな人からお金を集めてバックアップしてもらった。これはプロ的な行為だから、私は賞に値しない」というようなことを一生懸命言っているわけですよ。それでね、「まあまあ、そんなこと言わないで」と逆に会社の幹部が慰めているシーンがありましたよ。

(中略)

 三浦 エベレストのスキー滑走のとき、ぼくはほぼ3億円集めていたんですよ。

 本多 ほう、そんなだったのですか。

(中略)

 三浦 あきれるほどなのですよ。たった一人のためなのですよ、考えてみると。これで途中で「やーめた」と言ったら探検史上最大の詐欺だとね(笑)。やめてみるのもどうだと思ったこともあるけれど、これは引くに引けない。死んでもやらにゃいかん、はっきり言うと。このことを文春の中に書いたらね、編集長が原稿見て消しましたよ。なんか知らんけど。

三浦雄一郎「直己の冒険の現場に接しつづけて」,本多勝一・武田文男編「植村直己の冒険」(朝日文庫,1991)P.213-215

 三浦雄一郎氏は植村直己が登れなかったビンソン=マシフも登っているし、本人の努力や時の運もあるのだろうが、要領のよい人なのだと思う。

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  1. 2015/08/08(土) 00:18:04|
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