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植村直己の遭難の原因 - 本多勝一・武田文男編「植村直己の冒険」

 本多勝一・武田文男編「植村直己の冒険」を読んでいる。

 1984年に植村直己が冬季マッキンリー単独登頂を果たした後、行方不明となり、その後1991年に発行された本。遭難以前の植村直己へのインタビューを中心とする前編「生前の植村直己をめぐって」と遭難後の各界の知人の見解を寄せ集めた後編「遭難のあとに考える」の2部構成となっている。

 私がものごころついたときには植村直己はマッキンリーで遭難したあとなので、生前あるいは遭難のころのようすは全く知らない。これを読むと、マッキンリーでは今までに植村があまり履いたことのないバニーブーツを履いたことが遭難の原因になったのではないかと指摘されている。

 今回の遭難で、あるいはあの靴が原因では、と疑われているのが「バニーブーツ」。名前の由来は、通常の登山靴の二倍もあり、はくとまるでディズニーマンガのウサギの足のように見えるかららしい。(中略)新品だと200ドル程度するからゴム靴としては高価だが、全体がゴムの袋状で空気バルブで 内側の空気を調節でき、抜群の保温性がある。

 底全体が大きすぎるうえ、やたらに厚いバスケットシューズ型だから登山用アイゼンを装着するのが難しい。特に急坂の下降でよく使われる、斜面の方を向いてつま先のアイゼン爪を蹴り込むいわゆる「フレンチ=テクニック」をすると、靴底が曲がってしまうから滑落しやすい。(中略)

 植村氏が4200mの雪洞に残した日記には「歩き始めて5分もしないうちにアイゼンが脱げてしまう。履くのに二、三十分、やっと直して歩き始めると今度は反対側のアイゼンが外れる」と苦心惨憺している様が記されていた。

竹内準「植村直己氏遭難取材記」,本多勝一・武田文男編「植村直己の冒険」(朝日文庫,1991)P.116, 117

 また、植村直己の遭難場所にも謎があるそうだ。氷河パイロットのダグ=ギーティング氏が4900mのウェスト=バットレスで手を振る植村氏を見たのが、登頂の4日後である。一方、明大OB隊が5200mの雪洞に残した大量の遺留品を発見する。

「これだけの装備を残して登山家が下山することはあり得ない」(橋本隊長)。となれば、16日午前にギーティング氏が見たのは誤り、ということになる。マッキンリーの氷河パイロットを10年続け、現在一番の腕達者と言われるギーティング氏はこの発見を聞くと「信じられない」といって、もう一度、自分が植村氏を見た場所へ曇り空の中を飛び立ったほどショックを受けていた。

竹内準「植村直己氏遭難取材記」,本多勝一・武田文男編「植村直己の冒険」(朝日文庫,1991)P.112

 そもそもこのマッキンリー行は南極単独犬ぞり横断の準備のためのもの。この2年前にビンソン=マシフ目指してアルゼンチンの南極基地に滞在するものの、フォークランド紛争のあおりで軍の協力が得られず帰国している。マッキンリーのベースキャンプでテレビ朝日の大谷映芳氏が植村直己にインタビューしているが、目的を問われた答えはつかみどころがない。

 大谷 今回のマッキンリーの目的というのは何ですか。

 植村 別にないんじゃないですか。まあそれは冬の単独での初登頂をやりたいという気持ちは一応あるけれども、そんなことよりも、やっぱり南極に行きたいという一つの大きな気持ちがまだ抜けきっていないので極地の冬の山を自分で試しに登ってみてたとえ頂上に着かなくてもいいと思っているんですけどね。まあ、着きたいのはやまやまですけれども。何か南極の糸口が見つかればいいと思っているんです。

大谷映芳「マッキンリーで冒険を語る」,本多勝一・武田文男編「植村直己の冒険」(朝日文庫,1991)P.87

 いまでは若い人は植村直己を知らない人も多いと思うが、それでも一般の人にも知られる有名な登山家というと植村直己の名前を挙げる人は多いのではないだろうか。遭難から30年が経過しても未だ遺体も見つからずマッキンリーに眠っていると考えるとまだ終わっていないようにも感じる。板橋区にあるという植村冒険館には行ってみたいと思いつつも行ったことがない。近くに行くことがあれば行ってみたいと思う。

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  1. 2015/08/06(木) 21:46:01|
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